
「山さんが撃たれた…!」
青年教師、なおじもテレビの前で固まっていた!
1986年4月、全国のお茶の間に衝撃が走りました。
14年間にわたって「太陽にほえろ!」を支え続けた山村刑事、通称”山さん”が、まさかの殉職を遂げたのです。
第691話「さらば山さん」は、今なお多くの人の記憶に刻まれ続けています。
第691話「さらば山さん」あらすじ

千代田署捜査第一係長への栄転が決まった山さん。
大掛かりな拳銃密輸事件を見事に解決し、七曲署での最後の仕事を終えたその夜のことでした。
養子の隆を実の父親に返し、一人静かに夜道を歩く山さん。
そこに現れたのは、事件で逮捕された暴力団の報復を狙う組員でした。
「山村、覚悟しろ!」
という声と共に響く銃声。
倒れた山さんは、最期まで刑事としての誇りを失うことなく、静かに息を引き取ったのです。
石原裕次郎演じる藤堂ボスが病院で山さんの最期を看取るシーンは、まさに涙なしには見られない名場面でした。
露口茂の渾身の演技
教師時代の私が最も印象に残っているのは、露口さんの「演技を感じさせない演技」
殉職の瞬間まで、山さんは山さんだったのです。
取り乱すことも、大げさに苦しむこともない。
ただ静かに、刑事として生き抜いた男の最期を演じ切られたのです。
「栄転が決まったばかりなのに…」という無念さと、「14年間やり抜いた」という満足感。
その複雑な感情を、露口さんは一切の台詞なしに表現されました。
40年たった今も、昨日のことのように記憶に鮮やかに残る、なおじ…。
おそらく、なおじだけでなく昭和世代の多くの山さんファンは、私と同じだと思います。
山さん(露口茂さん)の死にざまこそ、昭和の名優の真骨頂。
山さんの成長軌跡
振り返ると、山さんの14年間は「人間的成長の物語」でもありました。
番組開始当初は、賭け麻雀に興じるアウトロー的な刑事だったのです。
しかし次第に経験と推理力を武器とする「落としの山さん」へと変貌。
若い刑事たちの良き父親役として、七曲署になくてはならない存在となっていきました。
1976年に妻・高子を亡くし、養子の隆を一人で育てる父親としての顔。
情報屋とのやり取りで見せる人情味。
犯人との対峙で発揮される冷静な判断力。
まさに「男の人生」そのものを、露口さんは14年かけて丁寧に演じ抜かれたのです。
ファンに残る永遠の思い出
「山さんロス」という言葉が生まれるほど、ファンの衝撃は大きなものでした。
私の教え子たちも、翌日の授業で「先生、山さんが死んじゃった」と泣きそうな顔で報告してきたものです。
それほどまでに、私だけでなく生徒たちにも山さんは「家族の一員」だったのです。
興味深いのは、山さんの殉職が「太陽にほえろ!」史上最後の殉職となったことです。
これ以降、番組は最終回まで一人の殉職者も出しませんでした。
制作陣にとっても、山さんの死は特別な意味を持っていたのかもしれません。
今も語り継がれる「男の美学」
あれから約40年。
山さんの殉職シーンが今も語り継がれる理由は、そこに「昭和の男の美学」が凝縮されているからではないでしょうか。
派手さはないけれど、最後まで責任を全うする。
家族を想い、部下を気遣い、正義のために命を懸ける。そんな山さんの生き様は、令和の今でも多くの人の心を打つのです。
露口茂さんが遺してくださった山さんという男は、これからも私たちの心の中で生き続けることでしょう。
「夜道気をつけ 山さんの教え 胸に刻む」(なおじ)太陽にほえろ山さん殉職第691話の衝撃「夜道気をつけ 山さんの教え 胸に刻む」(なおじ)
