
「山さんが…」
今朝のニュースを見て、思わず声に出してしまいました。
「太陽にほえろ!」の山村刑事役で親しまれた俳優の露口茂さんが、4月28日に老衰のため東京都内のご自宅で逝去されていたことが発表されました。
93歳でした。
私たち昭和世代にとって、露口さんは単なる俳優ではありませんでした。
あの低く渋い声、冷静沈着でありながら人情味あふれる山さんの姿は、まさに「理想の大人の男性像」だったのです。
突然の訃報に驚きを隠せない
報道によりますと、露口茂さんは今年4月28日に老衰のため東京都内のご自宅で静かに息を引き取られました。
93歳という大往生でしたが、ファンにとってはあまりにも突然の別れです。
松山市出身の露口さんは、俳優座養成所を経て1964年の今村昌平監督「赤い殺意」で注目を浴び、その後「人間蒸発」「ええじゃないか」などの社会派作品で存在感を示してこられました。
しかし、やはり私たちの記憶に最も深く刻まれているのは、1972年から1986年まで14年間にわたって演じ続けた「太陽にほえろ!」の山村刑事、通称”山さん“でしょう。
山さんが体現した「昭和の男の美学」
教師時代、私は生徒たちによく言ったものです。
「男は背中で語るものだ」と。
まさに山さんはその言葉を体現した人物でした。
番組当初は短髪でアウトロー的な刑事だった山さんでしたが、露口さんの演技により次第に推理力と洞察力を駆使する「落としの山さん」として成長していきました。
無口でありながら、その一言一言に重みがある。
若い刑事たちを見守る父親のような存在感。
特に印象深いのは、犯人との一対一の対決シーンです。
取り調べ室で西村晃さん演じる犯人と丁々発止を繰り広げた第163話「逆転」など、まさに大人の鑑賞に耐えうる重厚なドラマでした。
石原裕次郎さんからも「’太陽’になくてはならない男」と信頼を寄せられ、1986年4月の殉職シーンまで皆勤で出演されたのも、露口さんの責任感の表れだったのでしょうね。
声優としての意外な才能
実は露口さん、俳優業だけでなく声優としても素晴らしい才能をお持ちでした。
最も有名なのは、スタジオジブリの「耳をすませば」でバロン役を演じられたことでしょう。
あの上品で紳士的な猫の男爵の声が、山さんと同じ露口さんだったとは!初めて知った時は本当に驚きました。
また、NHKで放送された「シャーロック・ホームズの冒険」では、ジェレミー・ブレットが演じるホームズの日本語吹き替えを担当。
あの知的で推理力に長けた名探偵の声も、確かに山さんの雰囲気とぴったりでしたね。
低く渋い声質を活かした声優業は、露口さんの多彩な才能を物語っています。
同世代として感じる「職人の美学」
私が露口さんに強く惹かれるのは、その「職人気質」にあります。
1932年生まれの露口さんは、私の親世代の人物ですが、同じ昭和を生きた者として、あの時代の男性が持っていた「責任感」と「誠実さ」を感じずにはいられません。
14年間という長期にわたって同じ役を演じ続けることの大変さは、想像に難くありません。
しかし露口さんは、決して手を抜くことなく、最後まで山さんとして視聴者の前に立ち続けられました。
これこそが、昭和の職人が持っていた「一つのことを極める」という美学だと思うのです。
派手さはないけれど、確実に、丁寧に、自分の仕事を全うする。
そんな露口さんの姿勢から、私たちは多くのことを学ばせていただきました。
さよなら、山さん
報道では「葬儀は近親者で行った」とありました。
きっと露口さんらしく、静かなお別れだったのでしょうね。
私たち昭和を知る世代にとって、また一人、大切な「お手本」を失いました。
でも、山さんが教えてくれた「男の美学」は、これからも私たちの心の中で生き続けることでしょう。
露口茂さん、長い間、本当にありがとうございました。どうか安らかにお眠りください。
「星になった 山さん お疲れさま 」(なおじ)
